序
Amazonはサクラレビューだらけだから役に立たない、という言説をよく見かけるのだが、これは私からすればあまりにも自らの脳を使わなすぎる。
サクラであろうがなかろうが、レビューなどというものにはS/N比という問題はつきものであり、サクラだから役に立たないのだ、ということは全くない。 情報を収集して整理する能力さえあれば、レビューがサクラであろうがなかろうが、全く関係なく役立てられるはずだし、品物を見極める能力があればそんなものにサービスの利用価値を左右されることもないだろう。
基本的な戦略
良いものかどうか、欲しいものかどうかというのは、自分が探しているものが何か、ということに照らし合わせて、商品紹介などで購入検討する価値があるかどうかをチェックすることになる。
だから、基本的に「期待する機能を果たすのであれば購入する」状態であるはずだ。
そこで特に注目すべきは「レビューから製品の問題点を抽出する」であり、期待値を適正にすること、期待を満たす製品かどうかをチェックすることが主である。
また、商品紹介にかかれていない不明点についての言及がないかをチェックするというのもある。 例えば電池がAA(単三電池)なのかAAA(単四電池)なのかというようなことだ。 商品の説明として情報が不足していればそれを補完する。
レビューを役立てるためのシーケンス
除外1
全てのレビューから
- 具体的な特徴や賞賛点に関する記述のない賞賛
- 口汚く罵ったり差別や偏見、攻撃的な発言を含む内容を 含む もの
- 配送に関すること、品物がなんであるかを理解していないもの、自分の間違い・チェック不足に起因するものによる低評価
を 無条件に 除外する。
つまり、例え役に立ちそうな内容が含まれていたとしても、この条件に該当する場合はその内容をノイズとして除外する。
問題点の抽出
多くの人が指摘する問題は製品に起因する可能性が高い。 不良を引き当てる可能性はそれなりにあるものだが、あまりにも指摘されることは構造的欠陥である可能性が高い。 そのため、その点に対して警戒すべきだ。
また、そうした不具合でなく設計上の問題に関しては数が多くなくてもイメージすることで問題がないかを考えなくてはならない。 例えば、「滑りが悪い」「指が当たる」「音が小さい」「重さに負ける」などである。 これは、製品の不具合ではなく、製品が正しく機能した状態で抱えている問題である可能性が高く、個人差によって問題とはならないかもしれないが問題となる可能性が高いので考慮する必要がある。
期待値の問題の抽出
商品紹介として機能や性能上の特長とされている点に対してのネガティブな反応は収集すべきだ。 だが、これに関しては慎重に行わなければならない。
商品を正しく理解していないための不適切な期待からくる反動でのバッシングや、不具合にあたったというものを含む期待にそぐわないことに対する感情的な発言は除外すべきだ。
逆に有用なのは主要な機能に対する「落胆」である。 性能的優位を示していたのだが、実際には納得できる性能を発揮しなかったということは参考になる。
だが、利用条件が悪い、不具合があったなど「それがどんな条件・理由で」ということに関しても考慮すること。
ワークアラウンドの抽出
前述のような性能・機能上の問題があったにも関わらず、改造などによってこの問題を回避してしまう、という人がいる。 多くの場合このような人はメディアを添付してアップしている。
これは、多くの場合製品に由来する不具合である。
その不具合が許容できる、あるいはそのワークアラウンドによって問題が解消できるのであれば問題ないが、 ひとりであっても凝ったワークアラウンドをしている必要があれば明確な弱点であると認識したほうが良い。
除外2
機械的なプロモーションを除外する。
まともに使用せずに行われる依頼されたレビューは書くべきことをひねり出すのが難しく、どうしても単純な賞賛になりやすい。 なので、「似たような、意味がありそうに見えて実際には空疎な賞賛」を除外する。
さらに、商品紹介と同じ言葉、あるいはほとんど同じ内容で書かれたレビューは出品者によって用意されたものである可能性が高く、全く意味がないので除外する。
除外3
YouTuber的な編集された動画を上げる人、YouTubeチャンネルやブログに誘導する人はレビューによって利益を得ており、なおかつそれを目的としている人である可能性が高く、その場合はより注目を集める、レビューに対する高評価を得るという視点になるため、通販番組のたたき売りのように過剰な見せ方で刺激を出すことになる。
こうなると「真実性」「有用性」は置き去りになるのでこれを除外する。
情報の補完
先に述べたように、商品について重要なのだが、説明の中には書かれていない情報があれば、レビューから推測し補完できないか試みる。
駄目なら出品者に問い合わせるか、質問として記載したほうが良い(ただし、質問がどのように回答されるかという形式上、有用な回答が得られる可能性はやや低い)。
例えば、バーチカルマウスにおいては握り感としての大きさは寸法によって表すことができず、またどれくらい角度がついているのかという情報はないことが多い。 これらをレビューから推測しようというわけだ。
レビュワーとしての意見
私はAmazonが「対価を得てのレビューはそれを明記しなければならない」というルールだった頃にサンプルレビューをしていた。 レビュー総数の4割くらいがサンプルレビューである。
実態はどうなのか。
まず、レビューに対して条件をつけるのは1割くらいであった。 多くは写真や動画をつけろというものだが、ごく稀に星4以上をつけろと言ってくることもあった。
私はこれらの条件付きのレビューは全て断っていた。
とはいえ、現在に至っても(つまり規約に違反してでも)レビューを求めてくるセラーは8割くらいがこうした条件をつけている。
セラーとしては星3以下は低評価としてセールス上マイナスになるそうで、星4以上をつけて欲しいという意向はあるようだが、私が低評価をつけたサンプルレビューに対してレビューの削除、あるいは訂正を要求したのは3名だけであった。
ちなみに、私はサンプルレビューに対して結構低評価をつけていた。ちゃんと機能しない、仕様が規格に反している、あまりにも脆弱な作りであるなどの理由である。
ただ、中国系セラーについては不具合に対する考え方を変える必要がある。 日本では不良率を下げた上で不良であることを認めないという傾向だが、中国系の場合、「安く作って、不良が出たらすぐに交換する」という方法であることが多い。そのため、不良品の場合「不良だった」ということを報告すると、特に確認もせずにすぐに代えを送ってくれることが多い。 さらに、不良が続くということを言うと、場合によっては製品そのものを改良してくれたりもする。 そのあたりのフットワークの軽さを活かして付き合うのがポイントだ。
基本的には私が付き合ってきたセラーはノーだという言葉もすっと受け止めてくれたし、対応もしてくれたので、むしろ良いセラーたちだったと思う。
ただ、現実問題としてサンプルレビューで問題点を指摘したりするケースは稀だったが。
なお、明らかに問題がある(不良品であるなどの)場合はレビューせずにセラーに連絡して対応してもらうことになるので、少しフィルタされる。 これはレビュワーでなくともレビューする前に不良をセラーに報告し交換を求めるようなケースもあるということと同じではあるが、よりその傾向が強まるということである。 対応しなければ掲載されることになるし、問い合わせずに書く人もいるから、不良に対するレビューが抹消されるという意味ではない。