Harukamy's Memoranda

ドラムしない人のためのドラムキット/セットアップの話

導入

最近、子供の初ドラムを選んでいるお母さんに「お兄さんみたいになれるといいね」とか言われて赤面したはるかです。 おっさんでごめんなさい。へたっぴでごめんなさい。

ドラムって非常に原始的でわかりやすい楽器なんだけれども、ドラムの構成要素が一体なんなのかわからない、っていう人は結構多いらしい。 (例えドラムマニアのプレイヤーであっても)

そこで、ドラムがどんな楽器なのか、どんなセットアップがあるのかというお話をしていこうと思う。

これは非ドラマーには結構興味深い話になるはずだ。 お子さんにドラムを習わせようかなと思っているお母さんお父さんにもお勧めしたい。

ドラムって

ドラムは両手両足で太鼓とシンバルを鳴らす原始的打楽器である。

打楽器と言いながら、実は叩く以外の奏法も存在する。 テクニカルだが、鳴らすこと自体は簡単。楽器の中でも特にシンプルに楽しい楽器だ。

リズム楽器であるという点も特筆したい。 メロディ楽器や伴奏楽器だとよっぽど上手くならないとリズムに沿って演奏するわけにいかず、割とじれったいものだが、ドラムは常にリズムベースなので、リズム好き、ビートを刻みたい人にはお勧めである。

ちなみに、ドラムはあまり人気がない楽器でもあるため、バンド需要が高い。 そのため、ドラムだけ男子のバンドを組めるチャンスもある、とか言われている。 (ただ、個人的にはグループの中で男子ひとりというのはめっちゃしんどいのでお勧めはしがたい) 一方、ベース同様、崩れると全体がガタガタになってしまうことから、最低限要求される実力は他のパートと比べ高い。ミスったときにより恨まれやすく、そのくせ目立たないパートでもある。

ちなみに、楽譜を覚える難易度は「勘違い」や「見失い」が多いため、ドラムはむしろ高いと思う。 一方、アドリブ演奏に関してはレパートリーが増えれば割とできるので、他の楽器よりもずっと易しい。

お値段はリアルドラムだと6〜65万円くらい。電子ドラムだと8〜90万円くらい。 これにスタンドやらペダルやらと色々かかることもある。 なお、これはキット買いした場合の話であり、個別にそろえて、特殊なスタンドを使ってとする場合は、普通に100万円を越える。ただし、普通はキットを使うので、キット買いしないというのは割と特殊なケースだと思って良い。

リアルドラムに関しては点数さえ必要なものが揃っていれば安いのでも練習には困らず、耐久性もそれなりにあるので安い楽器なのだけど、電子ドラムの場合は練習に関わる要素がグレードによって大きく変わってくるため、電子ドラムの場合は入門でもそれなりに良いものを選んだほうがよく、そうすると結構高くなる。

また、ドラムは吹奏楽器ほどではないが、かなり大きな音が鳴る楽器である。 そして、ドラム特有な部分として、直接的に振動させる楽器なので、接触部分を揺らす性質がある。そのため、「床がなってしまう」という問題があり、階下の住人から苦情がくることが多い。1階に住むか、戸建てにするか、もしくは床に入念に防振対策をする必要がある。

ドラムの一般的な構成

ベーシックなドラムキット (Pearl Roadshow)

初心者が扱う最も基本的なドラムキットがこれである。 これは、「2タム1フロア2シンバル」という構成になる。 最小限、というわけではないのだが、最小限に近く、フルキットで叩く練習としてはいささか足りない。

スネアドラム

スネアドラム (Pearl Universal Steel)

スネアドラムはドラムのメインとなるもののひとつである。 いわゆる「小太鼓」である。

裏側に「スナッピー」という、じゃらじゃらした金属のワイヤーが張られている。

スナッピー (Pearl)

スネアドラムはこれを張ったり緩めたりできるようになっており、張ると「ダーン!!」という音がするのだが、緩めると「ぼーん」という音がする。 なお、張り具合の調整は別として、緩める機構はすネッピーが伸びてしまわないようにあるのであり、緩めたまま叩くことはない。

スネアドラムは唯一、積極的にリム(縁)を叩く楽器でもある。 リム自体はタムタムにもあるが、一般的にはあまり叩かない。

スネアドラムのリムは叩き方が3つあり、リムごしに面を叩く「オープンリムショット」、面に手を置いてリムを叩く「クローズドリムショット」、スティックの真ん中をつまんでリムを叩く「クロススティック」である。

オープンリムショットはより派手な音がするので、ロックなどでよく使われる。

「コッ」という音が鳴るクローズドリムショットはジャズやボサノヴァなどでよく耳にする。 クロススティックも音的には似ているが、もっと「カンッ」という音になる。

ちなみに、最近は打ち込みドラムが多いため、「めちゃくちゃ速くクローズドリムショットした直後に普通に叩く」みたいなフレーズがあったりする。クローズドリムショットを速く叩くのは至難の業なので、こういう曲のときは単純にリムを叩くこともなくはない。

電子ドラムでクローズドリムショットが可能な機種は非常に限られ、TD-17K系とTD-50K系のみ。及び未発売のe/Merge。 aDrumsは木の枠を叩くことでクローズドリムショットが可能だが、結構な音がする。

ちなみに、ドラマーにはスネアドラムの収集を趣味にしている人が多く、「ご褒美スネア」というのは割と一般的な語。

スナッピーのおかげで浅いところで反発するので、非常に叩きやすい。 また、強弱で表情をつけやすく、スネアの強弱は基本ながら、ドラマーの実力を推し量ることができる部分でもある。

バスドラム

床に直接置かれた真ん中の大きなドラムがバスドラム。ドッ、ドッと低い音がするもので、通常右足で叩く。 実はかなりバリエーション豊かなのだが、単体ではあまり売っていない。

鳴らす方法としてはバスペダルというものを踏む。 これを踏むとビーターという部分が動いてバスドラムを叩く構造だ。

バスペダル (YAMAHA FP9C)

安物だとそうなっていなかったりするけれど、一般的にはリンクを介していて、より強い力で叩けるようになっている。

踏み方はつま先で踏む人と、足全体を乗せて角度で叩く人がいる。 技術的には二連打する方法は色々あり、この場合はまた違った踏み方になる。

ちなみに、私は通常つま先で踏んでおり、連打する場合は二打目に足首を下げると同時に少し前のほうを踏むという方法をとっている。

バスドラムを叩いたときの感触は、バスドラム自体よりもペダルによる部分が大きく、動きがリニアか加速感があるか、反発力はあるかなど結構な違いがある。ボードが長いタイプは手前のほうを踏むことで連打しやすく、また比較的軽い力で踏めたほうが連打しやすい。 TAMAがパワータイプのドラマーが好む「アイアンコブラ」と、連打に向いた「スピードコブラ」の2種類をラインナップしており、象徴的だ。

リンクジョイントによって左側にペダルを増やし、2つのビーターで叩けるようにしたツインペダルもある。

バスペダル (YAMAHA DFP9D)

これは両足でバスドラムを叩くことができ、より素早く連打することができる。 以前はメタルなどでしか使われなかったツインペダルだが、今やJ-POP, アニソン, ゲーム・ミュージックなどでも当たり前のようにツインペダルが必要なフレーズが登場し(現実的に3連打は難しいので、局所的に3連打が入ったりするとツインペダルなしでは困難)、ツインペダルでないと曲を叩くのに不便という事態である。

ツインペダルのフレーズは結構慣れが必要なのだが、慣れると左右のバランスが取れるので右足で踏みまくるよりはずっと楽。

なお、写真のDFP9Dはヤマハの新作バスペダルで、非常にリニアかつぬるぬる動くので感動的だ。

タムタム

タム (Pearl DECADE MAPLE)

タムタムはスナッピーがなく、「ぼんっ」という音がするドラム。大きさの違いによって音程を出し、スネアを取り囲むように配置する。 深型のものは短い足をつけて床に置き、「フロアタム」と呼ばれる。

タムタムの構成には個性が出る。 もっともベーシックなのはタムタムがふたつ(ハイタム/ロータム)にフロアタムを組み合わせた「2タム1フロア」だが、4音階が欲しい場合はフロアタムをふたつにする「2タム2フロア」構成も一般的だ。

現代では逆にハイタムを省く構成がトレンド。それはタム回し(高いタムから低いタムへと順に叩いていくこと)の際により音高差が出るようになるというのと、ハイタムの位置にライブシンバルを置きたいという事情がある。 あとはまぁ、「シンプルでかっこいい」とか。

よりミニマム化された1タム1フロア構成や、スタンダードな2タム1フロアに近い感覚で叩ける1タム2フロア構成が流行。

フロアタムは大きく、また床まであるため、2フロアにするとローフロアタムはプレイヤーの右、あるいはやや後ろになる。 そのため、2フロアで叩こうとすると体をひねったり、スローン(椅子)ごと回転させるようなテクニックが必要になる。

タムタムが登場するのは連打の入る箇所やフレーズの終盤が多いが、リズムを刻む場合に使用されることもある。有名な “Sing! Sing! Sing!” などだ。

音量がでにくく、深くはいってばいんと返ってくる感じなので比較的強く叩くことが多い。

ハイハットシンバル

上下2枚合わせになっているシンバル。リズムを取る「刻み」に使用するもので、一番叩くものである。

ハイハットスタンドという専用のスタンドに乗っており、左足で踏むようになっている。 基本的には踏むと閉じ、離すと開くのだが、珍しいものでは逆にできるものもある。

ハイハットスタンド (TAMA Iron Cobra 900)

セットするときは「踏んだ状態でネジを回す」ようになっており、この状態でシンバルはぴったりくっつく。 つまり、大きく踏んで固定すると離したときに大きく開くようになり、合わせるのに大きく踏む必要がある状態になる。 また、これは閉じたときのペダルの角度にも関係してくる。

開いていると「チャーン」、閉じていると「チッ」という音がする。このコントロールは非常に大事だ。 また、ハイハットはめいいっぱい叩くと非常にうるさく感じられるものでもあるので、強弱のコントロールが重要でもある。

ハイハットは別に「開く、閉じる」の2状態なわけではなく、開き具合がある。 大きく開いていると余韻が長くなるが、開きすぎると2枚のシンバルが共鳴せずばらついた音になる。近いほうが重なった豪華な音になるのだ。

また、閉じていれば常に「チッ」となるわけでもなく、「ゆるく閉じた状態」だと「ジャッ」という音になる。激し目の曲だと完全にクローズせずにこの音が欲しいこともあるため、「曲中、押し付けない程度に踏みっぱなしにする」みたいなこともある。

さらに、踏んで閉じることでも音が鳴る。 これはクローズ時に近い「チッ」という音だが、もうちょっと厚みのある「ヂッ」という音がする。 手が忙しい曲や、刻みにライドを使う曲では、これを使って左足で刻むこともある。

さらに、オープンで鳴らしたあとに踏むことでオープンの余韻を止めることができる。 この場合も閉じた音は鳴るので、「ジャシュッ」という音になる。

この「踏んで止める」というのは結構難しくて、初心者のうちはなかなかできない。 ちなみに、私もまともめできるようになるまではめちゃくちゃかかった。 さらにいえば、スイッチタイプの電子ドラムだと良好な反応が得られないのでまともに練習にならなかったりする。

ハイハットはスティックを立て気味にして深く叩くと豪華な音が出て、スティックを寝かせて上から叩くとキレのいい音がする。 ここらへんは好みの問題。

高級な電子ドラムだと、ハイハットスタンドを使用するようになっており、実際に近い感触が得られる。 この点はATVのドラムが一歩抜きん出ている印象だ。

ツインペダルを使用して、なおかつハイハットのオープンクローズもするには、左足のペダルの踏み変えが必要になる。 これは結構テクニックが必要で、得手不得手というのもある。 さらに、踵とつま先を使って両方を同時に操作するという超絶テクニックもあるが、普通はしないし、できる人も多くはない。

クラッシュシンバル

クラッシュシンバル (Zildjian 16” Medium Crash)

クラッシュシンバルは「バシャーン」という派手な音が特徴的なシンバル。あまりしょっちゅう叩くものではないけれど、決め所で叩くことになる。

大きさ、素材、厚さなどで音の高さや派手さが変わる。 1枚はあったほうがいいけれども、2枚あると連続するフィルなどで表情がつけやすくなる。さらに派手なフィルや表情豊かなサウンドをもとめてシンバルをいっぱいつける人もいる。

スプラッシュシンバルやチャイナシンバルと呼ばれるものも、一応この部類。

クラッシュは1枚から2枚、そしてクラッシュ2枚に加えてスプラッシュ1枚あたりまでが一般的な構成。 スプラッシュはクラッシュよりも濁った、そして地味な音なので叩きやすく、スプラッシュが入る曲はちょいちょいある。例えばUndertaleの”Bonetrousle”とか。

エッジ(シンバルのはしっこ)をひっぱたくと「バシャーン」というおなじみの音が鳴る。 このとき、シンバルは中央でゆるめに固定されているのでゆれるようになっているから、スティックは振り切ることができ、反発はあまりない。 ちなみに、ちゃんと振り切るようにしないとスティックがよく割れる。はい、私よくやります。

面部分(ボウ)を叩くと「チンッ」という音がする。どこを叩いても一緒なわけではなく、エッジに近づくほど余韻が長くて派手な音になる。 ただ、現実的にクラッシュのボウを叩くというのは結構難しくて、どうしても派手に鳴らしがち。かなり上手い人でないとあまり積極的にクラッシュのボウを叩く人は少ない。

ただ、これは角度次第で、逆に言えば位置と角度がきちっと決まってないとクラッシュを綺麗に鳴らすのが難しい。

クラッシュが1枚しかない場合、通常左側にセットアップする。 クラッシュ1枚で音色が寂しい場合は、クラッシュがわりにライドを叩くこともある。

タム回しのあと、特にロータムからクラッシュにつながる場合は、位置にせよ距離にせよ右を叩きたくなるので、左にしかないとちょっとしんどい。

エッジ部分を連打することで「ジャーーーーーーッ」と長い音を鳴らすシンバルレガートは強弱の付け方に非常に訓練が必要で、初心者憧れの技のひとつ。

また、クラッシュにはもうひとつ「シンバルミュート」という技がある。 これは、クラッシュを叩いたあと手で止めるというもので、止め方としては「つかむ」「押し上げる」「押し付ける」の3つ。 これは難しいだけではなく、「つかみそこねて爪を割る」「止めようとした手をスティックで叩く」など事故率の高い奏法である。

余談だけれど、クラッシュで刻むというド派手なドラムの曲もなくはない。例えば、「完全感覚ドリーマー」のイントロとサビとか。

ライドシンバル

ライドシンバル (Zildjian 20” A Zildjian Medium Ride)

16インチが最も一般的なクラッシュシンバルに対して、小さくても18インチとひとまわり以上大きいのがライドシンバル。標準的には20インチ。

ライドシンバルは重いし、エッジが厚いのでクラッシュみたいな派手な音はそうそう鳴らない。「ガシャーン」と鳴らそうとすると結構力いっぱいひっぱたく必要がある。なお、実際にひっぱたくと「ぐわぁーん」という音がする。 そのため、ライドシンバルに関してはボウでチンチキ刻むのが主な使い方。特にジャズでは刻みはハイハットよりもライドでやることのほうが多い。

ライドに関しては低くセットすることがある。この場合、スティックをエッジに当てて振り抜くことができないので、ガシャーンと鳴らすことはもはやできない。刻み専用セット。

ボウを叩くときはエッジを叩かないようにしないといけないので、低くセットしていない場合は、腕を割と高めに上げて叩く必要がある。腕ではなく手首、あるいは指で叩くイメージだ。

また、クラッシュではまず叩かない中央部分の盛り上がり(カップ)を叩くことも多いのも特徴。 カップを叩くと「カーン」という音がする。これも刻みで使うのだけれど、割と派手。ちなみに、カップを叩くときは普通、スティックの先ではなく腹で叩く。

スローン

ドラムスローン (TAMA 1st Chair Round Rider Trio HT430B)

ドラム専用の椅子。くるくるして高さを調節するようになっている。

プレイする上で実は非常に重要なパーツであり、安定感とか高さとか、厚みとか、まあ本当にいろいろな要素がある。

まぁ、正直私はドラムスローン以外の椅子で叩いたことも普通にあるので、「どうしてもドラムスローンでなきゃだめ?」と聞かれるとちょっと困るのだけど、安定感とか、微調整可能かとか、回りやすいかとか考えると普通にドラムスローンがいいような気がする。 ちなみに、事務椅子みたいにガス圧昇降式のものもある。

ドラムスローンは重要なのだけど、その人にあったものを探すのは割と大変で、何年かやってスタイルも固定されてきた上で、色々ためしてやっとたどり着く感じ。 意外と高くて、ちょっといいやつだと1万円台になる。

スティック

ドラムスティック (Regal Tip ハローキティコラボモデル)

ドラムスティックは実は結構ドラムの音に影響する。 電子ドラムだと全く関係ないのだけど、Pearlのe/Mergeに関してはドラムスティックの違いも反映するらしい。

音が違うだけでなく、叩き心地や叩きやすさ、手の痛さとか非常に幅広く変わる。 ちゃんと選ばないといけないけれど、まずは基準を得るために「普通の」スティックを使うのがお勧め。「普通の」スティックといえば5A。5Aは各メーカーから出ていて、5Aとは名前に入っていないけれど、Pearlの110HC、TAMAのH214も定番スティック。

私は長らくハローキティモデルのKT-5A-x及びKT-Jazzを使ってきたけれど、最近はVATERのSESSIONを使っていることがほとんど。ドラムマニアをするときは、SESSIONだと軽すぎて入ってくれないので、Lerniのかねこなつきモデルを使っている。 ハローキティにたどり着く以前はTAMA H213Pを使っていた。

もっと大きな違いとして、例えばブラシがある。

ブラシ (ViC FiRTH Jazz Brushes)

これは、スネアを叩くと「ポッ」という音がするほか、スネアの面をこするという奏法もある。 主にジャズで使うけれども、バラードで使うこともある。

その他

よくあるのが、カウベル。 カウベルを使う曲は多いので、結構定番。

スネアにつけるタンバリンというのもある。 これはいわゆるタンバリンというよりも、シートに鈴がついたようなものを載せていたり、ちっちゃなフープに鈴がついたものを使ったりする。スネアを叩くたびにシャンシャン鳴るので、スネアの音が豪華でポップになる。

タンバリンはスネアスタンドにつける場合もある。 これは普通のタンバリンに近いもので、左足で刻むとそれに合わせてシャンシャン鳴る。 基本的にはハイハットをペダルで刻むタイプの曲でつかい、おとなしめな曲、ポップな曲で使うことが多い。

セットアップ

実は、ドラムの置き方にはものすごくバリエーションがある、というか自由度がある。 基本的にはスタンドによって置ける位置が制約されるので、ある程度決まっているところはあるのだけど、ラックを組んだり、あるいは特殊なスタンドを使うことで個性的なセットアップにすることもできる。

普通のセットアップ

標準的セットアップ (Rolnad TD-17KVX)

非常に普通な、2タム1フロア、3シンバルの置き方。

これは電子ドラムでラックなので、スネアが割と真ん中にきているけど、これだと邪魔になるのでスネアはもっと左になることが多い。それに伴って、ハイハットはもう少し遠くなる。

スネアのスタンドが右足にあたってはいけないのでスネアは左に寄るのだが、それに加えてスネアにも本来はそれなりに厚みがあるため、ラックを使っていても右足に当たらない程度には左に寄せる必要がある。いっぽう、タムタムはバスドラムにくっつく形のタムホルダーを使う場合が多く、中央になる。こうしたことから、一般的にはスネアは左より、ハイタムは中央左よりであり、ハイタムのほうが右側にくる。

シンバルのサイズに違いがないのでわかりにくいけれど、一番右のシンバルはクラッシュで、右から2番目がライド。 個人的には一番右をライドにしたい。 TD-17KVXでそのように組み替えるのは全く難しくない(コードを差し替えるだけ)。

1タムセットアップ

1タムのセットアップ (Roland TD-50K)

1タム2フロアで、通常ロータムが来る位置にライドをセットアップする、最近流行りのセットアップ。

このラックだと難しいけれど、タムをもっと低くして、ライドも低くセットアップするほうが今風かもしれない。

かぶせライド

かぶせライドスタイル (Pearl Crystal Beat)

右の高い位置にはクラッシュをセットして、それより右というか手前に、ライドを低くラットアップしてフロアタムにかぶせるスタイル。割と一般的で、私はこのスタイル。

これだとそこまでかぶさっているように見えないかもしれないけれど、プレイヤーから見るとライドは上からしか見えないので、完全にフロアタムに侵食しているように見える。 ライドをちきちきやるのが楽で疲れないので好きなんだけれども、どちらかというとロックっぽいセットの仕方だったりする。

シンバルをあまり寝かさないというところを含めて、これは結構私がよくやるやつっぽい。 フロアタムもライドシンバルも水平がポイントだけど、実はライドシンバルは少しだけ傾けたほうが叩きやすい。

変なセットアップ

変な(でも実現可能な)ドラムセットアップといえばこの動画である

TD-4KP

私が使っているTD-4KP。持ち運び用の電子ドラムで、たたむととてもコンパクトになる。 だが、それ故に変なポジションを強要されるという面もある。

Roland TD-4KP

ただ、見ての通り結構特殊なセットアップにならざるをえない。 特に特殊なのが、本来真ん中にあるはずのバスペダルが右奥に行ってしまっていること。

それ以外にも、タムが高い上にやたら近く、ハイハットが低く、フロアタムは体に寄っていて、スネアは手前真ん中にあるので、強烈に叩きにくい。しかも、割と入りにくいのでめいっぱい力入れて叩いてしまうからもっと変なことになる。 また、スネアより左側にハイタムがあるのも結構違和感がある。「ハイハットが低い」「ハイタムが左」はドラムマニアにも見られる問題。

ドラムの外観の話

見てわかるとおり、ドラムというのは楽器の中でも大きく、見た目が派手な部類である。 特に、バンド編成などの中ではそのように見える。

加えて、ドラムは使用するものを増やしたり減らしたりすることができ、全体の形をセットアップとポジションで大きく変えることができる。大きなバスドラムが鎮座することもあり、視覚的インパクトが大きい。

YAMAHA Live Custom Hybrid Oak

これはヤマハのLive Custom Hybrid Oak。インパクトの大きいツーバスに加え、宙高くマウントされたティンバレスとバスドラムが特大のインパクトを放っている。

セット自体は普通なYAMAHA Tour Custom(ライブイベントでよく見るやつ)でも、存在感はとてもある。

YAMAHA Tour Custom (CRS)

これが電子ドラムになるとどうしてもサイズが小さいのでインパクトに乏しい。 単独ではわかりにくいが、ATV aDrumsにしても、サイズ的にはジュニアドラムと同等で、人が座るとなんか小さく見える。

ATM aDrums Artist

画像では伝わりにくく、そもそも載せづらいので、YouTubeでビデオをみてほしい。 TD-17KVXはトレーニング用とはいえ、ライブでも使えるクオリティだが、見た目に寂しい。

aDrumsはそれと比べて本格的な外観だが、小柄な女性が叩いていても、1:00あたりなどを見るとちょっと小ささを感じるだろう。

それと比べ、生ドラムのLive Custom Hybrid Oakのビデオでは、男性が叩いていてもプレイヤーが埋もれるようなサイズ感であり、足元に隙間がない。インパクトが増しているのが分かるだろう。

こうしたことからも分かるように、生ドラムのセットアップでは「叩きやすさ」だけでなく、「見た目のインパクトやかっこよさ」を追求する場合もある。 例えばあえて叩かないドラムやシンバルを設置したり、叩きにくい位置にシンバルを置いたりだ。 回したり投げたりといったスティックトリックも、「ドラムをかっこよく見せる」テクニックなわけだ。

スネアやタムは少し傾けたほうが叩きやすいが、あえて水平で、さらにタムもスネアと変わらないほど低くマウントするのも「低さ」というインパクトを出すセットアップである。一般的なセットアップではプレイヤーはドラムに埋もれ気味になるので、ドラマーが叩いている姿が正面から見えるというのもまたインパクトがある。

逆に立ち上がらないとたたけないような高い位置にシンバルをセットするというのもよくあるセットアップである。

電子ドラムを買う話

ビギナーに何がいいかという話なら、文句なしにTD-17KVXを勧めたい。

2タム1フロア、3判じるのオーソドックスなキット、ツインペダルも使える自然な打感のバストリガー、ハイハットスタンドを使用したハイハット、クローズドリムショットが可能な大口径スネアと、練習に必要なすべてが揃っている。 センサーの反応も含め、ちゃんとドラムの練習として成り立つのがポイントが高い。

拡張可能で、将来的により多くのパッドを使った練習が可能であり、パフォーマンスにも使用可能なクオリティだ。

もう少しグレードが上がるが、EXSも捨てがたい。シンバルがハイハットも含めてより自然であり、より口径が大きいドラムとシンバルパッドは、TD-17KVX以上に実践的な練習が可能だ。

TD-17のようにモジュールに拡張性がなく、特にEXS-5はこれ以上パッドを増やしようがないという点は見劣りするが、パフォーマンスまで含めて考えると入門にもちょうどいいと言えるのではないだろうか。

もちろん、これらはやる気があって、「うまくなりたい」気持ちに溢れているという前提であり、置物にならない場合の話ではあるが。 EXS-5は自宅でDTX-Maniaしたい人にもお勧めだ。とても楽しくなることは間違いない。

これは2019年時点の話だが、TD-17のモデルチェンジはしばらく先だろうし、EXSに関しては出たばかりなので、しばらくの間は通用するだろう。

ドラムは難しい?

極めようとすればどの楽器だって同じようなもの1だけれど、初歩的なパターンを覚えれば曲に合わせて叩くこと自体はできるというのがドラムの良いところ。

ドラムの基本部分はそれほど多くはない(本当に基本だと20種類くらい、難易度の高いリズム含めても100種類ないくらい)基本パターンの組み合わせからなっており、一般的な4/4の楽曲であれば、「基本パターンだけで曲に合わせて叩く」みたいなことができる。 物足りないかもしれないが、これだけでも割と楽しめる。

習得しているパターンが増えればそれだけでももっと楽しめるし、その曲のフィル部分(切り替わりなどで「キメる」ところ)を覚えて叩けるようになれば曲がバッチリ決まっているように聞こえてくる。

コピーとかカバーって言い出すと別に簡単ではないんだけれども、楽しむことだけを考えればすごくハードルが低いし、色んな楽曲を叩くことができる。 それでいて曲を完璧に叩くまでのハードルも他の楽器と変わらない感じなのだからとってもオトクだ。

さらに、曲を完全に弾けるようにならないとスタートラインに立てない他の楽器と違い、ちゃんとできていなくてもどんどん新しい曲に合わせて叩いていけるのもドラムの魅力。 そして、そもそも「レベルに関係なく演奏して楽しい」という点ではドラムがより優れている。 ひとつ壁を越えた時にできること、できる曲がぐっと増えるのもドラムのいいところ。

練習自体はすごく地味だけどね。けれど、オルガンでも練習は地味なので、楽器ってそんなもんかもしれない。

あと、スタジオには普通はドラムがあることが結構大きくて、持ち込む必要がないので、他の楽器と比べて練習ハードルが低い。 さすがにキーボードやエレキギターみたいに自宅でフルプレイする方法がある楽器にはかなわないけれども。

おすすめドラム動画

ぜひヘッドフォンで聞いてもらいたい素晴らしいドラムプレイである。

桿子 Drumstick 「【ソードアート・オンライン アリシゼーション】LiSA - ADAMAS フルを叩いてみた / SAO S3 Opening full Drum Cover」

TD-30をベースに拡張したキットを使う桿子 Drumstickさんは、かっこいいドラミングとスピードプレイが特徴の台湾人ドラマー。スティックトリックも得意で、スティックを完全に放り投げてしまうものや、空中でもう片方のスティックでスティックを回すなど、非常に高度なトリックを見せてくれることもある。

大胆な拡張キットは、生ドラム出身のため、トリガーを使い分けることを避け、生ドラムに近い感覚で音をアサインするために作られたという。

動画は中国ツアーでバックバンドも務めたLiSAさんの楽曲で、それもあってか非常に気合が入っていてスティックトリックも多め。とにかくカッコイイ。生ドラムでも出しにくいヘヴィーなサウンドを鳴らすTD-30ということもあってサウンドもかっこいい。

もうひとつ、延々とツインペダルを踏みまくる「【バンドリ! ガルパ】ロゼリア - FIRE BIRD フルを叩いてみた / BanG Dream! Roselia FIRE BIRD Full drum cover」もお勧めしておきたい。上や右からの視点だと足元にバスドラムを叩くビーターが見えるが、このペースで延々左右の足を交互に、正確に動かしつづけるハードさは体験せずとも想像するだけでとてつもないと分かるだろう。

ダイナ四 「【Undertale】アンダーテール戦闘曲メドレー② を激しく叩いてみた!Undertale - Battle Theme Medley - Drum Cover-Second」

「速さ」で知られるダイナ四さんだが、実は非常にタイト(正確)なタイムドラマーでもあり、表現力、テクニックなどどこをとっても隙がないスーパードラマーである。よくある、最初から輝くものを見せ、人とは違うのは明らかだったタイプの天才ではなく、尋常ならざる努力を積み重ねてスーパードラマーになった人でもある。

1年半前の動画とはいえ、特にカロリー消費量の多いメドレーがこちら。 Death by glomourではペダルの同時踏みとスムーズすぎる踏み変えが輝き、超キレのあるシンバルミュートを挟んでタイム維持の難しいバスドラムを刻みながらのプレイ、超高速ツインペダル、シンバルミュートから中盤に入ると表情づけでひとつの太鼓だけを叩いているとは思えないフレーズのAsgore、難しいフレーズを叩きながらのスティックトリックを含むHopes and Dreamsと見所しかない素晴らしい動画である。

Asgoreではクラッシュシンバルのボウプレイから「やさしいクラッシュ」など繊細なプレイも多い。

川口千里 「デモ演奏 【壬申の乱】 by 川口千里/菅沼孝三&天地雅楽ドラムコンテストⅡ」

「手数姫」の愛称で世界に名を轟かせる女性ドラマー、川口千里さんが世界を驚愕させた動画がこちら。どの動画も数十万再生程度はいっているが、この動画は400万再生に到達しているのでなかなかヤバイ。

細腕・細脚からは信じられないほどのパワーヒッターであり、同時にその愛称の通り「めちゃくちゃ叩きまくる」人でもある。 5年前の動画だが、もはや意味不明というほかない異次元のドラムプレイを見せつける女子高生(当時)。表現力豊かな繊細なプレイもできるので、「さすが世界のドラマー」という感じである。

もうひとつ面白い動画がThe kimono drum performance 着物でドラム / Senri Kawaguchi。成人式の着物姿で叩いているのだが、脚が開かないので、「ひとつのペダルを両足で踏む」という奥義を見せてくれている。 ちなみにこの技、師匠である菅沼孝三さんが教則ビデオの中で紹介した技であり、あまりに非現実的な超絶テクニックに未だに語種となっているもの。

練習方法

パターン練習

まずは8ビートから…というか、「どんたんどんたん」から始めるのが基本。

「パターン」と呼ばれるごく基本的なリズムがあり、これを習得するのが最初の目標。 そんなに難しくはない。

パターンは基本を習得したら、その変形である応用やアレンジも習得していく。 このバリエーションが増えると、フィルなど細かいところは違うものの「曲に合わせてたたく」ということ自体はできるようになる。

なお、どの練習も「安定したリズムで叩き続ける」ため、5分以上連続で行う。

基礎練習

タイム

メトロノームを使い、あるリズムで正確に叩く練習。

トレーニング機能で、メトロノーム鳴らしっぱなし以外のトレーニングができる電子ドラムもある。

スピード

比較的難易度の高いリズムやパターンを、自分ができる限界の速度で叩いていくことでスピードを上げていく練習。

スティック

ドラムの打法そのものの練習。

スティックの持ち方、叩き方などには様々な種類があり、その打法を練習する。

エクスプレッション

表現力を磨くため、既にしっかり習得したパターンを用いて叩き、適切に強弱がつけられているかをチェックする。

録音して聞き直すのが基本で、電子ドラムにはそのためのレコーディング機能がある場合もある。

ソング (ジャム)

短いループするフレーズに合わせて叩くという、より実践的なリズム練習。

パターンを叩くだけでなく、フィルを入れる練習をするのが普通で、フィルを含む練習や、 即興プレイ用の練習に使用する。

ソング (コピー)

曲に合わせて正確に叩く。

モチベーションが上がりやすい。 適当に叩いてしまわないようにちゃんと採譜するなりして、とにかく楽譜を用意することが推奨される。

まずはゆっくりから初めて、「正確に叩く」ことを意識して練習する。

叩くのが難しいフィルなどは、そのフィルだけを抜き出して単独の練習へ。

ルーディメンツ

ルーディメンツはマーチング向けのトレーニングメニュー。

手だけで行うものの、トレーニングパッドという簡易なアイテムで練習することができ、 ドラムを使っての練習が難しいときに練習できることもあり、差をつけるポイントになっている。

スティックワークの練習や、打法の練習を含む形になり、エクスプレッションの練習でもあるので、 練習に取り入れることでさらなるレベルアップを図ることができる。

ルーディメンツはかなり難しいものが多い。

Wrote on:
2019-12-03